和歌の世界の月を詠む vol.2  ~月と百人一首~

こんにちは。月よみ師®の静花です。

6月になり、そろそろ梅雨入りですね。
これから迎える暑い夏に備え、恵みの雨の季節。
植物たちは陽の光と水を得て青々とし、更に成長。
草木の緑も一層深みを増していきます。
しっとりと濡れた自然の景色も美しいものです。

雨音に耳を傾けると、不思議と心が落ち着く感覚。
水は、深いところへ入っていき感情へ働きかけるエネルギー。
雨の日は、ゆっくりと自分の心の内側との対話に向いていますね。

今日は月齢3日かに座の月。
晴れていたら、夕暮れの西の空に細い美しい三日月が見えることでしょう。
かに座のキーワードは、大切な人を育て、守ること。

普段は当たり前のように感じている家族や大切な人との時間を、大事にすることを意識してみましょう。
愛情表現、感謝の気持ちを伝えることで、更に絆が深まるのではないでしょうか。
自分の大切にしていることを、再確認することも良いですね。
大切なこと(人、物)を大切にする。
そう意識することで、新しい気付きにつながります。

前回に続き、『和歌の世界の月』を私なりに考察していきます。
もちろん、様々な解釈があると思われますので、この限りではありません。自由に読み解いていく楽しさを感じて頂けたらと思います。

いつの時代でも、月は私たちの身近にあり、感性を育み、心のよりどころとなり、心の内側の世界へと導いてくれる存在。
また百人一首の歌を詠んだ頃は、今のような外灯もなく、夜は月明かりを頼りにしていたのでしょう。
愛しい人に会いに行けるのは、月の夜。
愛しい人を思い待ち焦がれ、月を眺めた夜。
様々な恋模様を月に重ねて歌に詠む。
月への思いは、現代以上に強かったかもしれません。

別れと夜明けの月

有明のつれなく見えし別れより
暁ばかり憂きものはなし
――壬生忠岑(みぶのただみね)『古今集』巻一三・恋三――

【現代語訳】
あなたとお別れしたとき、有明の月が無情にも残っていましたが、その月のそっけないように、あなたが冷たく感じられたその別れ以来、暁ほどつらく思われるものはないようになりました。

引用 : 中村菊一郎監修『よくわかる百人一首』日東書院刊

恋の様を月で表す歌。
相手の女性に会いに行ったのに会えずに帰ってくる辛さ。月のそっけなさと相手の女性のそっけなさが重なっている様子。
季節は、明確に表現されていないので不明ですが、「有明の月」という表現から夜更けに出て、夜が明けても空に残っている月を表しています。
そこから、満月以降の新月前までの時期ということが推測されます。また、月明かりを頼りに夜道を歩きますので、ある程度月の光があるとなると下弦の月までの時期でしょうか。

もし、相手の女性と睦まじい時間を過ごせたのであれば、夜が明けても残っている月は名残惜しさに感じられそうですが、同じ月であっても光を放たない月は無表情に感じられるかもしれませんね。
そして、女性の冷たい態度と体感的にも気温の肌寒さも感じているのでしょうか。
もし、冬の寒さを感じる時期ならば、体感する寒さも表現したくなるかもしれません。しかし、そこまでではないようですので、季節は春か秋といったところでしょうか。

満月の時期は感謝のタイミング、下弦の月の頃は手放しのタイミング。
この歌から考察すると、別れ=手放しのタイミング=下弦の月の頃と考えてもいいのかもしれません。
辛い別れを経験することにはなりましたが、手放した後にはきっと新しい恋をしたことでしょう。

月の光のような白雪

朝ぼらけ有明の月と見るまでに
吉野の里に降れる白雪
――坂上是則(さかのうえのこれのり)『古今集』巻六・冬――

【現代語訳】
ほのぼのと夜が明けるころ、有明の月の光かと見まちがえるほどに、吉野の里に降っている白雪であることよ。

引用 : 中村菊一郎監修『よくわかる百人一首』日東書院刊

冬の夜明け、一面の白銀の世界。
まるで明け方まで残っている月の明かりかと思ってしまうほどの明るさ。
昨夜は、まだ雪が降っていなかったのでしょう。
だからこそ、一夜にして真っ白な里の美しさに驚き、この情景を歌にしたいと思われたのでしょう。

そして、有明の月。この言葉は逢瀬のあとの帰り際の月を歌う時によく出てきます。
暗に、愛しい人とこの美しい白雪の里の情景を眺めたかったという気持ちが表れているのかもしれません。

冬の月夜の明け方、おそらく満月から満月過ぎの頃と考えるとかに座、しし座の月かもしれません。
一面の銀世界、そこには冬の朝の美しさと威厳さも感じます。
白雪が降ったことから創造性が加わり、凍てつく寒さの中で颯爽と背筋をピンと伸ばしたしし座のイメージに受け取れます。

夏の夜の月

夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを
雲のいづくに月宿るらむ
――清原深養父(きよはらのふかやぶ)『古今集』巻三・夏――

【現代語訳】
短い夏の夜は、まだ宵のうちと思っている間にもう明けてしまったが、月はとても西の山の端まで行きつくことはできないだろうに、いったい雲のどのあたりに宿っているのだろうか。

引用 : 中村菊一郎監修『よくわかる百人一首』日東書院刊

平安貴族たちは、短い夏の夜に月を一晩中眺めながら過ごすこともあったようです。
夏は暗くなるのが遅く、まだ夜は始まったばかりと思っていても、あっという間に夜明けになったようす。
夏の暑い雲に覆われてしまったのでしょうか。月がどこにいったのか、見失ってしまったようです。

夏の夜ということから、7月または8月でしょうか。
美しい月を眺めて過ごすということから、満月の頃と考えられます。
おそらく、やぎ座またはみずがめ座の満月。
やぎ座ならきちんとした型通りの安定した過ごし方、みずがめ座なら自由さが入ってきます。
この歌は型にはまらない面白さがあります。あいにくの雲に覆われて、月を見失っているのですから。
そういう意味合いから言うと、やはりみずがめ座の満月なのでしょうか。
みずがめ座のキーワードは、自由、友情、コミュニケーション、未来、宇宙、普遍性、理論の再構築。
夏の夜のお月見は、風流さの中に友と集い親しみ語り合うのがぴったりのように感じますね。

歌の世界を想像すると思いもよらぬ情景が見えてきて、月の持つ神秘性に想像力をかき立てられます。
そして、実際の空を眺めていると更に想像の世界は広がっていきます。
月からのメッセージにより新たなインスピレーションがわいてきます。

今日も空を見上げてみてくださいね。
意識するだけで、月からあなたへのメッセージがおりてきます。
それは、今感じている事柄へのヒントになるかもしれません。

最後までお読みくださいましてありがとうございました。

静花

月よみ師のプロフィール

静花 月よみ師®
岩手県生まれ。幼少期に宇宙の図鑑を読み、月や星に興味を持つ。
小学生の頃に出会った養護教諭に憧れ、上京し看護師になる。

2008年神戸に転居。
2011年東日本大震災が起こり、東北の風景や人々の生活が一転したことに衝撃を受ける。
「自分は何者か、何のために生まれてきたのか」と考え続け、幼少期から興味を持っていた西洋占星術を学び始める。
月が肉体や感情に与える影響の大きさを知り、学びを深めるため2020年月よみ師となる。

現在は看護師を続けながら、美味しくて幸せになれる発酵食を学んでいる。趣味は天体観察と聖地巡礼。
月や星、食を通して心と体も健康になれる暮らしのアドバイザーとして活動中。