和歌の世界の月を詠む vol.3 ~番外編:月と枕草子~

こんにちは。月よみ師の静花です。

6月末、梅雨が例年よりも早々に明けたことに驚きましたが、やはり早すぎたようで7月に入ってから長雨が続きましたね。『戻り梅雨』と言うそうですが、日本的な響きにしっくりときて馴染んでおりました。
その戻り梅雨もそろそろ終わりでしょうか。
6月に梅雨明けしたタイミングでは、蝉も鳴かず真夏の到来を実感できませんでしたが、今では朝から蝉が元気に鳴いており、夏本番の準備は整った様相です。

この2年間様々なイベントが中止となり、気持ちがふさぐような心持ちになることもありましたが、徐々に花火や夏祭りなどが開催され始めており、気持ちに張り合いが生まれるのを感じます。
体調を整え、その場所に見合ったマナーを携えて日本の夏を楽しんでいきたいですね。

今回はちょっと題材を変えて、誰でも知っている古典文学の一節を取り上げてみました。
高校の古典の教科書にも取り上げられている清少納言の『春はあけぼの』の一節で、ここにも『月』が出てくるのです。

夏は夜。月のころはさらなり。闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもおかし。雨など降るもをかし。

清少納言 『枕草子』 KADOKAWA発行

夏の夜は何とも言えぬ趣がありますね。
昼はうだるように暑くても、夜になると地面のほてりも和らぎ、風のある日は心地良さも感じます。
川辺は風の通り道。そよそよと吹く風と川のせせらぎの音は、さらに涼しさを感じさせてくれる。
たとえ気だるい暑さが残っていても、夜の小川には蛍の小さな光が飛び交い、空を見上げると夏の夜空を彩る天の川。
そんな美しい光景が思い浮かびます。

“月のころ”とは満月の頃でしょうか。
夏(旧暦5,6,7月)満月なので、いて座、やぎ座、みずがめ座の満月と考えられます。
満月は、物事が成就し感謝するタイミング。
いて座の満月は、現時点に留まらず目の前の問題を突破し動き出している時。
やぎ座の満月は、集団、社会の枠組みを大切にして目標に向かって行ってきたことが達成するタイミング。
みずがめ座の満月は、既存の枠組みを壊し新たな仕組みを作り横のつながりを拡げていく時期。
宮中でお勤めをされていた清少納言。彼女の気持ちの中でも、きっと月のメッセージを感じておられたのではないでしょうか。

“闇もなほ”よしということですから、新月の頃はまた趣があってよいという意味。
闇夜で多くの蛍が飛び交う様子は月が出ていないことで、複数の蛍の光がより華やかに際立つロマンチックな光景。
たとえ蛍が1,2匹でもそれはそれで儚さを感じさせ、光の行く先を目で追いながら物思いにふけるような情景が目に浮かびます。

夏(旧暦5,6,7)新月なので、ふたご座、かに座、しし座の新月と考えられます。
ふたご座の新月は、情報や交流を楽しみながら学習につなげていくのに良い時期。
かに座の新月は、家族や恋人など大切な人たちと共に過ごし、自分の活動範囲を決めていくタイミング。
しし座の新月は、自分自身の尊厳を立ち上がらせる努力を始める決意の時。
新月は、願いを叶える決意をするのに良いタイミング。
時代は違えど、いつの時代でも私的な願い事は大きく変わらないのではないでしょうか。
清少納言は、どんな願いを胸に夜空を見上げていたのでしょうね。

夏の夜の雨は、涼を感じると共に湿り気も感じさせます。
雨音を聞きながら、思いを寄せる人に思いを巡らす。
そんなしっとりとした艶やかさを含んでいるようにも感じます。
それとも、会いに来てくれない愛しい人を思い涙する。そんな夜もあるかもしれませんね。

夏の夜の雨といえば、七夕の夜に降る雨を『催涙雨(さいるいう)』というそうです。
年に一度、七夕の夜だけ会うことを許された織姫と彦星。
でも、その夜に雨が降ると天の川の水かさが増して会えなくなってしまうという悲しい物語。
そのとき二人が流す涙になぞらえて催涙雨というそうです。
つらく悲しい気持ちに、とめどなく涙があふれてくるような雨ですね。
この日の夜だけは、必ず晴れてほしいものです。

夏本番はこれからですが、健康で元気に過ごせるようにしたいですね。
日本の夏は湿度が高く気温も高いので、昔から様々な涼をとる方法を工夫してきました。
風通しを良くするよう建具をはずしたり、陽を遮るすだれをかけたり、道に打ち水をしたり。
見た目にも涼しい夏着物や氷菓子、音も涼しげな風鈴。
理にかなった昔ながらの生活の知恵と風流を感じさせる美しさは、今の私たちの生活の中に取り入れられることもありそうですね。

今日は、ふたご座月齢25日の下弦の月。
明け方に美しい細い月が見えます。
手放しのタイミング。
心の中に溜まっているもの、部屋の隅に取っておいたもの。
不要だと感じたら感謝をして手放す。
そうすることで、必要な情報やコンタクトがあるかもしれません。

平安時代、短い夏の夜は夜通し月を愛でることもあったとか。
夜通しは無理でも、少しの間でもいいので空を見上げてみませんか。
空を見上げていると、今必要なメッセージが心に響くかもしれません。
きっとそれは、小さな心の潤いになることでしょう。

今回も最後までお読みくださいましてありがとうございました。

静花

月よみ師のプロフィール

静花 月よみ師®
岩手県生まれ。幼少期に宇宙の図鑑を読み、月や星に興味を持つ。
小学生の頃に出会った養護教諭に憧れ、上京し看護師になる。

2008年神戸に転居。
2011年東日本大震災が起こり、東北の風景や人々の生活が一転したことに衝撃を受ける。
「自分は何者か、何のために生まれてきたのか」と考え続け、幼少期から興味を持っていた西洋占星術を学び始める。
月が肉体や感情に与える影響の大きさを知り、学びを深めるため2020年月よみ師となる。

現在は看護師を続けながら、美味しくて幸せになれる発酵食を学んでいる。趣味は天体観察と聖地巡礼。
月や星、食を通して心と体も健康になれる暮らしのアドバイザーとして活動中。