和歌の世界の月を詠む vol.4 ~月と百人一首~

こんにちは。月よみ師®の静花です。

8月も半ば過ぎですが、まだまだ残暑が厳しいですね。
8月は独特の空気感があります。終戦の日、お盆があるからでしょうか。
そして、太陽星座しし座の季節。キーワードとしては、自己の尊厳の確立と自己表現。
自己の基盤となる日本国のことを改めて考えたり、自分のルーツやご先祖様に思いを馳せたりすることで、自分のアイデンティティの確立、再確認になるのではないでしょうか。
軸が定まることで、自信をもって自己表現していくことができると思います。

今日の月は、おうし座の月。月齢20日、満月(-)期 感謝の月です。
おうし座の月は、現実的な安心、安定を求め、五感を使い心豊かに過ごすのに良い時です。
たとえば、ご飯が美味しく炊けたとか、肌触りの良いタオルを使ってみたとか、香りの良いシャンプーに変えたなど、身近なことで小さな幸せを感じてみてください。
日々の暮らしの中で小さな幸せを感じることは、心豊かな感性を育み感謝につながります。

今月も和歌の世界の月を詠んでいきたいと思います。

瞬く間に雲間に隠れてしまった月

めぐり逢ひて見しやそれともわかぬ間に
雲隠れにし夜半の月かな
――紫式部 『新古今集』巻一六・雑上――


【現代語訳】
久しぶりにめぐり逢って、見たのがそれであったかどうかもわからないうちに、
あわただしく雲に隠れてしまった真夜中の月。その月のように、久しぶりにめぐり逢って、昔の友であったかどうかもわからないうちに、あわただしく姿を隠してしまったあなたですよ。
引用・参考文献 『よくわかる百人一首』 監修:中村菊一郎 発行所:日東書院

新古今集の詞書(ことばがき)によると、紫式部が7月10日頃に幼友達と会ってわずかな時間しか過ごせなかったときのことを詠んだ歌のようです。
幼友達との再会は嬉しかったが、その友は忙しかったとみえ共に過ごせる時間を十分に持てぬ間に慌ただしく去っていってしまったという残念な気持ちが表されています。
幼友達ですから、お互いに当時の気持ちに戻り、語り合いたい気持ちになると考えられますが、そうはいかなかったのでしょう。

旧暦の7月10日頃。現代で考えると約1か月違うと考えられるので新暦8月でしょうか。そして、旧暦の10日頃ですから、新月から数えて10日頃。
上弦の月を過ぎ、満月に向け満ちていく頃。満月(+)期 引き寄せの月。

現代でいう8月10日頃ですから、いて座の月。いて座は自由を愛する星座。次の高みの目標を見つけ、そこに向かって飛び出していくイメージです。
友の様子から旧交を温める間もなく、すでに次の目標へ向かっているいて座のスピード感のあるイメージがありますね。                            
月と競争するかのように去っていった幼友達も、紫式部と同様にキャリアのある忙しい女性なのかもしれません。

愛しい人を思い待ち焦がれる月

やすらはで寝なましものを小夜更けて
かたぶくまでの月を見しかな
――赤染衛門 『後拾遺集』巻一二・恋二――


【現代語訳】
おいでにならないとわかっていたならば、ためらわずに寝てしまったでしょうに、あなたをお待ちしていて、とうとう夜がふけ、西の山に沈もうとするまでの月を眺めてしまったことですよ。
引用・参考文献 『よくわかる百人一首』 監修:中村菊一郎 発行所:日東書院

当時の結婚は、通い婚。女性は待つことしかできない辛い気持ちを詠み、来てくれなかったお方への恨みつらみも含まれていそうですね。
歌からは季節はうかがうことができませんが、月を眺めながら愛しいお方を待っているうちに、月が天中から西に傾き、山の端に隠れようとしている時間になってしまった様子がわかります。

月相を想像すると、夜も更け明け方近くになってしまった様子から、その間ずっと月が見えている状態なので、おそらく上弦以降から満月、そして下弦の月の間と思われます。
上弦の月から満月の間の月相が意味することは、引き寄せの月です。
また、満月から下弦の月の月相が意味することは、感謝の月です。

愛しいお方が来られるというので、今か今かと待ち焦がれていた気持ちが歌われていますから、感謝というよりも、空に浮かぶ美しい月に愛しいお方が来てくださるよう願いを込めていたと考えられます。
後に、引き寄せの願いが叶えられたことを願うばかりです。

思い出すのは冬の美しい月夜

心にもあらでうき世にながらへば
恋しかるべき夜半の月かな
――三条院 『後拾遺集』巻一五・雑一――


【現代語訳】
心ならずも、つらいことの多いこの世に生きながらえるようなことがあったならば、
きっと恋しく思い出されるにちがいない、この美しい夜半の月であることよ。
引用・参考文献 『よくわかる百人一首』 監修:中村菊一郎 発行所:日東書院

『後拾遺集』の詞書によりますと、三条院は重い眼病を患っており、天皇の地位を退かなければならない状況で詠んだ歌のようです。
時は、旧暦十二月十余日とのことですので、新暦でいう一月十余日と考えられます。十余日とは10日と数日経過のため、ふたご座またはかに座の月、満月手前の頃でしょうか。

ふたご座は、活発に外に出て人と交流、学習や知識がキーワード。
かに座は、ロマンティックで物思いに耽ることや帰属願望、過去がキーワードになります。
病のわが身を憂う気持ちや今後の状況を不安に思う辛さと真夜中の美しい月から考えると、かに座の月かもしれませんね。

月相は、もうすぐ満月。満月直前の引き寄せの月。
病が軽くなるよう、そして現在の地位に留まれるよう祈りを込めているようにも感じます。
一月後、譲位された後に失明し出家したとのこと。
きっと、この時の冬の冴え冴えとした美しい月夜を思い出し、心の慰めとしていたのかもしれません。

つい先日の夕暮れ時の空。
ピンク色に色づいた入道雲。
何かの形に見えませんか?
私には、“子犬を抱いたお釈迦様”に見えます(笑)

夜空の月や星だけでなく、日中の空を眺めるのもとても楽しいですよね。
空の青さだったり、雲の形や色だったり、太陽の光による美しい大気光学現象が見られたり。
人間には造ることのできない、自然の美しさに圧倒されます。
そして、たくさんのインスピレーションをくれます。
今のあなたに必要なヒントが示されているかもしれません。

“目に映る全てのことはメッセージ”
—松任谷由実さんの『やさしさに包まれたなら』の一節より―

最後までお読みくださいましてありがとうございました。

静花

月よみ師のプロフィール

静花 月よみ師®
岩手県生まれ。幼少期に宇宙の図鑑を読み、月や星に興味を持つ。
小学生の頃に出会った養護教諭に憧れ、上京し看護師になる。

2008年神戸に転居。
2011年東日本大震災が起こり、東北の風景や人々の生活が一転したことに衝撃を受ける。
「自分は何者か、何のために生まれてきたのか」と考え続け、幼少期から興味を持っていた西洋占星術を学び始める。
月が肉体や感情に与える影響の大きさを知り、学びを深めるため2020年月よみ師となる。

現在は看護師を続けながら、美味しくて幸せになれる発酵食を学んでいる。趣味は天体観察と聖地巡礼。
月や星、食を通して心と体も健康になれる暮らしのアドバイザーとして活動中。

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